自然エネルギー財団は10月23日、ディスカッション・ペーパー「日本の陸上風力発電コストの現状と分析」を発表した。世界的に見て高いと言われている日本国内の陸上風力発電の発電、設備コストなどを先進国の水準などと比較・分析したもので、2008年時点での国内での風車設置コストはkW当たり約30万円と、オーストラリアに続き世界で2番目に高額となっている。
同ペーパーによると、2010年時点で世界各国での風力発電設備設置コストはkW当たり2500ドル弱となっている。一方、日本は2008年時点で3000ドル前後。2010年に日本の水準を超えるのはオーストラリアの3318ドルとなる模様。この高騰は、▽世界的な風車の供給不足、▽鋼材不足など資材コストの高騰、▽消耗品・交換部品のコスト増加、などが影響したと見られている。この水準は、日本風力発電協会などが2011~2012年でも変化がないと認めた。2005~2009年度にNEDOに採択された案件91件で見ると、平均設置コストは26万3000円、風車1基当たりの平均出力は1844kWで、1基当たりの発電容量が小さい割には設置コストが高い。設置コストは風車本体が大半を占めていて、設置コスト中58.3%の比率を占める。次いで土木工事(13.9%)、電気工事(8.5%)、電気設備など(5.8%)と続く。2009年以降、国内での風車価格は中国の3倍と急騰しており、その高価さが目につく。
同財団では、この理由を▽三菱重工業、日立製作所、日本製鋼所の国内大手3社の年間生産台数が100基に満たず、工場の稼働率が非常に低いこと、▽このため工場稼働に伴う1基当たりの固定コストが高くなり、価格に転嫁されていること、などと分析している。1995~2011年までのメーカー別国内シェアでは、旧NEGミーコンを含むヴェスタスが24.1%で第1位。以下、ゼネラル・エレクトリックが18.5%で第2位、三菱重工業が12.8パーセントで第3位となっている。第4位は11.3%でエネルコン、第5位は5%でシーメンスだった。
次に建設コストだが、国内は設置箇所が山岳地・僻地の場合が多く、建設コストが高いと見られている。同財団が実施したヒアリングでは、建設コストの約2割が輸送コストで占められるという意見もあり、欧米など土地が平坦な場所での建設は日本の約6割の建設コストでできるという意見も見られた。また、環境影響評価コストも大きく影響しており、2012~2013年では出力20MWの事業の場合、1~2億円と2011年までの2~2.5倍の費用がかかっているという。その割には、2011年度の全国設備利用率は20.7%と高い水準とはいえない。同財団では、今回の調査ではどの項目が設置コストに影響しているかは定量的に分析できなかったとしながらも、「設置コストの低減は、制作や制度、ビジネス側の努力で可能な部分も大きいと考えられる」とレポートを結んでいる。