2013/07/05 ニュース
分散型電源各社の市場戦略④--発電設備開発を通じて地元の課題解決にも貢献、自然電力
 今回紹介する自然電力は設立されてから約3年という若い企業だ。現状では太陽光発電事業が主力となっている。現状で開発した発電設備容量は全国で400MW(平成24年時点、共同開発含む)と大きなものだ。同社の特徴的な取り組みの一つは、再生可能エネルギーの先進国であるドイツのエンジニアリング企業juwi(ユーイ)と今年1月に折半出資で合弁会社を設立し、その企業「juwi自然電力」が、同社で受注した設備の設計施工と維持管理を行っている点だ。ドイツのエンジニアリング企業が事業参画するメリットとはどのようなものだろうか。
 
●発電と地域貢献が両立するエネルギー--太陽光
 
 自然電力は平成23年6月に設立された。平成24年度の太陽光発電設備の開発実績は、九州・関西・関東地域など、自社で150MW。中国地域では250MWと突出しているが、これは同社がNTT西日本、東洋エンジニアリングなど6社が事業主体を構成する岡山県瀬戸内市の案件に参画しているためだ。
 同社の磯野謙社長らは、以前は事業会社で風力発電事業に携わっていた。そこで、再生可能エネルギー電力の供給というグローバルの問題と、地域社会との共存が重要な課題であるという認識を持っていた。東日本大震災を契機に、自分たちの経験・ノウハウが地域社会の問題解決の一助となればと考え、太陽光発電事業で会社を興すことにしたという。太陽光発電は、風力発電より短期の立ち上げが可能で、日本では新たなマーケットとしてポテンシャルがあると考えたからだ。
 同社の社名は再生可能エネルギー全般を扱う企業を連想させるものだが、「現状では太陽光発電設備が事業の大半を占める」(佐々木周・事業開発部ジェネラルマネージャー)という状況だ。
 
●プラントサイトの地元が主役
 
 今後は、再生可能エネルギー全体で平成29年までに1GWの発電設備を開発する目標だ。一口に「開発する」と言っても、新規参入が相次ぎ競合他社が続々と生まれている状況なので、当然受注・開発のため他社との差別化が必要になってくる。現在の市場環境については「完全に自社と競合する企業はそれほどない。我々は自ら土地を探し、資金を調達し、設計・施工と運営・維持管理を行う。全部一貫して行える点が強みだ。」(同)と見ているようだ。
 事業の最も大きなポイントは地域に寄り添う姿勢だ。プラントサイトの地元が主役であるという姿勢は明確だ。「地域を主体として開発する。(他社とは)そのスタンスの違いが大きいのではないか。地域の問題解決を再生可能エネルギーを通じてどう行うかが我々の主眼だ。発電事業は5年10年といった短いスパンで見るべき事業ではなく、半永続的なものだ。その時だけ首都圏からやって来て、プラントだけ建設して引き上げるような事業スキームでは長続きしないものだ」(同)と、最初の土地探しから地元企業と一体で行う。発電設備の施工も地元の建設企業や電気業を巻き込み、雇用創出を心がけている。メンテナンスでも地元企業をなるべく起用するという。あくまで主軸はプラントサイトの地域であり、ベネフィットを共有し、地域活性化につなげるよう努めている。
 
●太陽光先進国のノウハウを存分に活用
 
 もうひとつの差別化ポイントがjuwiとのパートナーシップだ。「ローカル&グローバル」をモットーに、juwi自然電力は今年1月24日、「日本唯一のグローバルノウハウを持つメガソーラーEPC(設計・調達・建設)企業」となるため設立された。パートナーシップの組成に当たり、juwiは風力も含めグローバルで3GW弱の施工経験があることが大きなアドバンテージとなった。
 太陽光発電パネルの設置は、国内では建設会社、エンジニアリング会社など非常に多くの企業が参入しており、他業種・他分野からの参入が続く現状を見ると差別化しにくいようにも思える。この点は、「太陽光発電設備の設計施工は一見簡単そうに見える。だから多くの企業が参入しているが、そんなに簡単な話ではない」(同)。このため、設計施工でも独自に、しかも顧客に大きなメリットがある差別化ポイントと考えられたのが、juwiとの提携・合弁設立だ。国内の太陽光発電市場はまだマーケットとして小規模だが、グローバルで見ると話は違ってくる。そこで世界規模で経験とノウハウのある企業として、以前からコネクションのあったjuwiを選んだ。
 「juwiは世界20か国の施工経験でサプライヤーを選ぶ目を持っている」(同)という調達力も大きなメリットだ。
 juwiからはスペイン人のエンジニアが1名、熊本支社に常駐している。例えば、合志市・熊本製粉太陽光発電所(出力1MW、写真)の設置にあたっても、そのエンジニアは地元の建設企業と合同で行った工程会議にも参加し、細かい工程のチェック作業も行った。これが地元との信頼関係を築く一助にもなったという。「太陽光発電設備も発電所だ。発電所を作るのは難しい作業だ。それを責任を持ってクオリティの高い設備として施工する」(同)という姿勢が地元の共感を呼んだようだ。
 
●全国への太陽光普及で拠点設立を加速
 
 今後の受注環境はどう見ているか。
 「市場的な開発可能性は今後も増えると見ており、確実に一つ一つの案件はキャッチアップしていく。一方で、事業を継続するためにはメンテナンスなどは欠かせない。juwiも自前のメンテナンス部隊を抱えているほか、我々も専業メンテナンス企業を立ち上げている最中だ。我々も一部IPPとして投資していくことも考えている。」(同)とする一方、他の再生可能エネルギーのメニュー化もそんな遠い将来の話ではないようだ。
 同社は6月3日付で、福岡市博多区に3か所目の拠点を設立した。熊本県にはもともと事務所を置いていたとのことだが、「九州ブロックは日射条件が良い。また地域の住民もこういった新規事業へ積極的な人が多い。こういう側面から九州は重点地域と位置付けている。従来は南部を主眼にしていたが、九州北部の開発も視野に入れ営業所を開設した。今後福岡と熊本が九州の二大拠点になるだろう」(同)。同社では、ゆくゆくは各地方に小規模な拠点をまんべんなく設けたいという。そこで雇用を創出し、できるだけ地域に根付けるような拠点を開設したい考えだ。
 では将来的な事業環境はどう見ているか。他の再生可能エネルギー発電設備との送電線の奪い合いやグリッドパリティ(商業電力など既存の電力と発電コストが等しいか、それ以下になるポイント)の問題、電力会社との系統連係など、ここに来て負の側面が露わになってきている節もある。これについては「去年よりは難しい状況になっては来ている。エリア的には九州での開発の可能性は十分あると考えているし、まだ送電線の空いている地域はたくさんある。そのためには市場に出てきにくい情報を把握し、具体化につなげることだ。」(同)という。
 グリッドパリティの問題はどうか。事業主体としていかに利益を確保していくのか。「グローバルで事業を展開するjuwiのノウハウはここでも生かせると思う。」(同)とjuwiに期待する側面は大きい。そして、「九州だけでなく、日本全国に太陽光発電所が広まらないと、日本に再生可能エネルギーは根付かない。日射量が低いからといって太陽光発電所が作れないわけではない。そのためには我々が各地に展開していくということも考えている」(同)とスケールの大きな構想を持つ。地元重視の姿勢と提携相手から得られる最新の技術・ノウハウが合致して、「自然電力モデル」とでもいうような革新的な事業スキームが生み出されるか、今後が期待される。