2013/06/13 ニュース
洋上風力で風車基礎部を人工魚礁に活用、海産研が提言
 海洋産業研究会(海産研)はこのほど、平成24年度の「洋上風力発電等の漁業協調の在り方に関する提言研究」(委員会委員長・松山優治東京海洋大学特任教授)をまとめた。この中で、風力発電事業者が洋上風力発電所を建設する場合、利益が相反する漁業権者との協調策として、リアルタイムでの海況情報の提供や風車基礎部の人工魚礁化利用などを提言した。
 
 今回の漁業協調メニュー案は、出力100MW(規模:7万世帯・約25万人都市、風車28基を岸側2km、沖側3kmの地点に設置)の仮想洋上風力発電所をモデルケースとして研究されている。委員会は「漁業補償から漁業協調へ」との観点から、▽発電事業者も漁業者も共に利益を得るWin-Win方式、▽地域社会全体の活性化に貢献、▽透明性を確保した合意形成、などをベースに協調策を模索した。発電事業者には、漁業権の正しい知識を持ち、敬意を払いながら漁業者との調整と合意形成を図るようにすること、積極的に漁業協調システムの導入を図り、沿岸漁業と地域の振興に寄与するよう取り組むことを求めた。一方、漁業権者には、海洋再生可能エネルギー利用の意義を理解し、海域の総合利用の観点から、洋上発電立地に協力することを求めている。
 
 これらを踏まえ、協調メニュー案として8分類23項目のコンセプトを策定した。その主なものは、▽リアルタイムでの海況情報の提供、▽風車基礎部の人工魚礁化利用、▽魚介類・藻類の養殖施設の併設、▽定置網等の漁具の併設、▽施設の建設・保守点検時、漁船を利用、▽洋上発電事業への出資・参画など漁業権者との協働、などとなっている。 今回は相互調整が重要課題として浮上してきていること、発電事業者も漁業者も相互にメリットを得る漁業協調方式への転換の重要性が認識されるようになったことなどを受け、メニュー案を策定した。今後は国内の海域数か所を想定し、現地の漁業ニーズを勘案したケーススタディを実施する予定。また浮体式洋上風力や波力、潮流発電などを想定した漁業協調メニューも検討していく。