2013/06/13 ニュース
日本風力発電協会代表理事に聞く(上)~日本の「モノづくり」能力を活かして、世界に追いつき、追い越す~

世界の風力発電導入量は、2012年末で282GW(GWEC調べ)であり、伸び率は2010年に若干鈍化したものの、ここ数年は20~30%の伸び率となっている。国別の累積導入量は、1位が中国、2位が米国、以下3位ドイツ、4位スペイン、5位インドの順となっており、日本は13位と低迷している。そんな日本の風力発電事業の現状・問題点・将来について日本風力発電協会・代表理事の永田哲朗氏に聞いた。インタビューは2回に分け、第1回は、協会の話、風力発電の現状を紹介する。

 

日本風力発電協会代表理事 永田哲朗氏


(略歴)

1950(昭和25)年生まれ、東京大学経済学部経済科卒・シカゴ大学経営大学院卒(MBA)

1974(昭和49)年東京電力株式会社入社、企画部、環境部、事業開発部、国際部等を経た後、2002(平成14)年の株式会社ユーラスエナジーホールディングス発足に伴い代表取締役副社長に就任。2003年から2012年まで代表取締役社長。2012年に相談役。社外では、2004年に一般財団法人新エネルギー財団理事に、2010年には一般社団法人日本風力発電協会の代表理事に就任し、現在に至る。

 

 

Q.はじめに風力発電協会の設立のお話をお聞かせください。

 

2010(平成22)年4月に現在の「日本風力発電協会」が誕生する前は、風力事業に関する団体として、「日本風力発電協会(JWPA)」と「風力発電事業者懇話会(WPDA)」の2つの団体がありました。当時の「日本風力発電協会(JWPA)」は、“風車”というモノづくりに関わる主としてメーカーが集まった団体でした。そして、「風力発電事業者懇話会(WPDA)」は、開発から設備を建てて運転するという主として発電事業の団体であり、この2つの団体が併存していました。その当時の風力発電導入は年間約30万kW、累計で約218.6kW(2009年度導入実績)に留まり、国が当面の目標とした『2010年度末300万kW導入』の達成は、極めて困難な状況となっていました。

 

その原因としては、当時の新エネルギー導入促進のインセンティブであったRPSの目標が低水準であったことや、それに伴う風力からの買取価格の低迷、さらには風車価格・発電コストの高騰による事業性の悪化などがあり、先行きの不透明感がますます高まっていました。

 

しかし、世界に目を向けてみると、米国、中国が牽引役となり、年間約3,700万kW、累計約15,800万kW(2009年導入実績)を超える一大産業として成長していました。これだけ見ると後れを取っている感がある日本の風力発電事業ですが、実は風車自体は、約2万点の部品からなる精巧な組み立て機械であり(ガソリン車は3万点、電気自動車は1万点)、日本のお家芸ともいえる“モノづくり技術”が活かせる産業なのです。実際、海外製を含む風車の多くに“日本製”のコンポーネントや部品が採用されています。このような日本の特質を活かしながら、飛躍的な拡大が見込まれる世界の風力市場に伍していくために、国内における産業としての結束を強化するとともに、政界、官界、一般社会に対する発言力を高めていく必要に迫られていたわけです。そこで、風力発電事業に関わる多くの関連業種・企業が結集し、風力発電事業を代表する団体として新たな「日本風力発電協会」が発足したのです。現在では、風力発電に関わる全国幅広い業種から225社が会員として参加しており、国内の風力発電設備容量の約80%を会員企業でカバーしています。

 

Q.協会設立から3年が経ちましたが、風力発電事業の現状はどうでしょうか

 

どの国でも同じなのですが、在来型電源とコスト面で対等になるには、もう少し時間がかかるというのが現状です。したがって、風力発電事業を促進するためには何らかの支援が必要ということになります。しかし、逆にいうと、目標を立てて普及させようと政策的なバックアップが行われると、急速に普及するともいえるのです。いま、世界の風力発電導入実績で1位は中国、そして2位が米国なのですが、米国は再生可能エネルギーに対する税制等を活用しながら、あっという間に風力の老舗といわれていたドイツを追い抜いてしまいました。また、中国は、エネルギーが不足気味であるというお国事情もあって国が積極的に風力発電を推進し、瞬く間に米国を追い抜いて世界1位となりました。世界全体では、1位の中国と2位の米国で、約5割近いシェアを占めていることになります。

 

世界の風力発電導入実績(国別)  出展:GWEC

 

一方日本は、現在世界13位と後れをとっています。国別導入実績を見ると、日本もそれなりに伸びてはいるのですが、世界市場拡大の猛烈なスピードに追い付いていけないというのが現状です。2012年は、国の10年間の導入目標300万kWの最終年にあたる節目の年でしたが、247万kWと、目標の8割程度しか達成できませんでした。では、今後どのくらいの目標を立てていくのかということですが、これがまだはっきりしていません。

 

日本の風力発電導入実績(10kW以上)  出展:NEDO

 

風力発電を普及させた国の多くでは、まずは自分の国のマーケットを拡大し、そこで自国の風車メーカーを育成し、さらには輸出産業まで発展させていくという戦略をとってきました。世界でベスト10に入っているデンマーク、ドイツ、スペインやインド、韓国も同じ道を歩んでいます。日本は、風車メーカーの数が少ないということもありますが、日本市場では国内メーカーが累積ベースで2~3割しか占めていません(単年度では7割以上を占めた年もあります)。残りは海外メーカーであるデンマークのヴェスタス、米国のGE、ドイツのエネルコンなどが占めています。

 

※明日14日(金)は、「風力発電事業の課題・問題点」「中長期的展望」のお話を紹介します

 

(聞き手) 若生幸成 今淳史