2013/05/24 ニュース
産総研、太陽光発電設備のパネル劣化現象を抑制へ

 

 産業技術総合研究所太陽光発電工学研究センターの増田淳・太陽電池モジュール信頼性評価連携研究体連携研究体長、原浩二郎・主任研究員は、サスティナブル・テクノロジー(STi、事業所:佐賀県嬉野市)と共同で、結晶シリコン太陽電池の出力低下を抑制する技術を開発した。
 
 海外では、太陽光発電設備でPotential-induced degradation (PID)現象と呼ばれる太陽電池モジュール・システムの出力が大幅に低下する現象が起こっているという。この現象はモジュールに高電圧がかかることで発生すると見られ、長期間での経年劣化と違い、設置後数か月~数年でも起こりうるとされる。そこで、両者はSTiの得意な無機酸化物などをコーティングする技術を活用し、酸化物系の化合物薄膜をモジュールのガラス基板上にコーティングすることでPID現象の解決を狙った。
 
 今回開発した新技術は、酸化チタン系の複合金属化合物薄膜を太陽電池モジュール用のガラス基板表面上にコーティング。PID現象の主原因と見られるナトリウムイオンなどのガラス基板からの拡散を防止し、モジュールの出力低下を抑制する。この結果、コーティングしない標準型モジュールの変換効率は、PID試験後は15.9%から0.6%に低下した。一方、コーティングしたガラス基板の対策済みモジュールでは、効率低下はわずかだったという。両者は今後、薄膜の材質や膜厚、製膜条件を最適化して、PID現象の抑制向上とより詳細な抑制メカニズムの解明、大面積モジュールでの実証試験などを実施する。