日立製作所と三菱重工業は2月9日、両社が関係する南アフリカ共和国の火力発電案件で、資産譲渡に関する見解を別個に発表した。この案件は、日立の連結子会社Hitachi PowerAfrica Proprietary Limited(HPA)などが平成19年に受注したMedupi、Kusile火力発電所向けにボイラーを建設するもの。この案件で資産・負債と顧客との契約に基づく権利・義務の調整金を巡って両社が対立しており、両社は今後も協議を継続するとしている。
HPAの受注後、両社は火力発電事業を統合した「三菱日立パワーシステムズ」(MHPS)を設立した。そのため、この案件の資産などはMHPSのアフリカ法人、MHPSアフリカに譲渡されたが、三菱側は受注した時点で損失が発生する見通しを日立側に指摘。その上で、工程と収支見積を精緻化し、最終譲渡価格を決定し、暫定価格との差額を調整することで合意した。これを踏まえ、三菱側は平成28年3月、日立側に譲渡価格調整金の一部として482億ランド(邦貨換算約3790億円)をMHPSアフリカに支払うように請求した。その後三菱側は、先月にこの請求額を897億ランド(約7634億円)に引き上げている。金額の引き上げは、収支見積を精緻化して算出したものだが、日立側はこの請求を「契約に基づく法的根拠に欠けるため応じられない」と拒絶している。一方三菱側は「法的に保証された契約合意に基づく正当な権利の行使」と、全面的に見解が食い違っており、協議は難航が予想される。