12月13日~15日、東京江東区のビッグサイトで開催された日本最大級の環境展示会「エコプロダクツ2012」で、エコタイムズ社は、NPO法人エコネットと武蔵野大学環境学部との連携で「分散型エネルギー社会の実現をめざして~内外の新しい動きをさぐる~」というテーマでブースを出展した。
国内事例は、武蔵野大学の環境学部環境プロジェクト「Ecological times」の2人の学生と協力して20の事例を集め、パネルにて紹介した。また、そのうちの4つの事例に関しては、現地に取材を敢行。関係者の話を聞くとともに写真と映像を収め、「エコプロダクツ2012」のNPOコーナーにて展示展開した。映像は約10分程度に編集して、終日パソコン上で流し続け、来場者から関心・賞賛を受けた。
以下、「エコプロダクツ2012」でパネルで紹介した国内事例20である。
(取材協力:武蔵野大学環境学部 三井翔太・生田目雄太)
取材をした4つの国内事例
内陸部最大規模の「メガソーラー」~山梨県甲府市「米倉山太陽光発電所」
■山梨県甲府市に山梨県と東京電力との共同事業。12.5haの広大な敷地に約8万枚の「太陽光パネル」設置。
■全国有数の日射量を味方に、最大出力10,000kW、年間1,200万kWhの内陸部最大規模の発電施設で一般家庭約3,400軒分の年間使用電力量に相当。
■二酸化炭素削減効果は年間約5,100トン。
■夏場の発電アップと、風圧の影響を少なくするために「太陽光パネル」の設置角度を10度に設定。
■維持管理コスト削減のため、雑草を生えにくくする「有機質土壌改良工法」採用。山羊の放牧による雑草処理を行うエリアもある。
■発電所の隣に再生可能エネルギーの情報を展示するPR施設「ゆめソーラー館やまなし」を併設。次世代エネルギーの情報発信や環境教育の場として活用。
■「ゆめソーラー館やまなし」館内の電力は屋上の「20kWの太陽光パネル」や敷地内の雨水を集めた「小水力発電」、地中の熱を使っての空調などでエネルギーの“自給自足”によるCO2ゼロ運営を目指す。
■発電所の周りには遊歩道、約300本余りの桜が植栽されており、将来はお花見の名所に~。自然に溶け込んだ再生可能エネルギーによる発電所である。
“川とともに生きる”、「小水力発電」のまち~山梨県都留市
■市内を流れる家中川の3つの水車「元気くん1号」~「元気くん3号」が発電。
■それぞれのポテンシャルは「元気くん1号」が最大出力20kW、「元気くん2号」が19kW、「元気くん3号」は最大出力7,3kW。すべてタイプが異なる。
■ダムのように大きな落差を必要としないため、大規模な土地整備という欠点を補うことが出来る
■発電した電力は都留市役所の電力に使用されており、年間平均して館内使用電力の約半分以上をまかなっている。また、使用しきれない電力については売電している。
■平成21年度からは発電した電力に付加する環境価値を「グリーン電力証明書」として販売。
■水車には“可変速ギア”が搭載されており、河川の流水量に応じて自動的にギアを調整し水量が変化しても効率よく発電する事が可能。
■「元気くん1号」は水車の下部のみを使用する“下掛式”であり、本流から流れてきたごみが水車導水路に侵入するのを防ぐ除塵機を設置している。また、「元気くん3号」は青いらせん形の水車で少ない落差を利用して発電を行う。
■水車「元気くん」の建設費用の一部は、「つるのおんがえし債」という市民参加型の公募債を活用する事で賄っている。
■発電した電力は、併設されているエネルギー使用を抑えたモデルハウス「エコハウス」や「城南倉庫」という植物工場にも送られている。
商用日本初、エネルギー自立型災害対応マンションを建設、“業界の異端”~「レモンガス株式会社」
■LPガス販売大手レモンガス株式会社の“レモン”は、「L=LPガス、E=エネルギー、M=メディア、O=オープン、N=ネットワーク」という事業コンセプトが込められている。
■「LPガス」事業は、レモンガスのブランド名で家庭用に約30万世帯、業務用に全国大手外食チェーン900店舗に「LPガス」を提供。
■「LPガス」の安全性や快適性を追求した24時間の集中監視システム「カード365」を開発・運用。累計35万世帯に設置され、ガス漏れといった非常事態にも対応。
■そして、CO2削減と光熱費の削減を高める再生可能エネルギーの「太陽光発電」「コージェネレーション」による“W発電”の推進にも挑戦。
■“W発電”を具現化した災害にも強いエネルギー自立型マンション「スマートハイブリッドマンションALFY橋本」を神奈川県相模原市に2012年5月誕生させた。
■「スマートハイブリッドマンション」は、「太陽光発電」「コージェネ施設」により消費電力の約7割を自給でき、「コージェネ」で生じた排熱も室内暖房や給湯に利用。災害時や停電時にも電力不足に陥ることがない。また、省エネ効果に優れCO2排出量も少ない災害に強く、環境にも優しい。
■今後、「LPガス」の集団供給、および「太陽光発電」により、系統電力に依存しないマイクログリッド住宅地の開発(「隣組」コージェネレーション)を小田原市と開成町にまたがるエリアで計画中。常に“5年先を見る”という理念の下に事業を展開している。
日本初「地中熱」利用による地域冷暖房システム実現~東京の新名所「東京スカイツリータウン®」
■国内初の「地中熱」利用による地域冷暖房(DHC=District Heating and Cooling)システムを構築。水熱源ヒートポンプを用いて地中から熱を採取・放熱し、「東京スカイツリータウン」全体に熱供給を行なっている。
■メインプラントに設置された、高効率熱源機器と大容量水蓄熱槽の使用で、国内最高レベルのDHCを実現。個別熱源方式と比べ年間一次エネルギー消費量を約44%、年間CO2排出量48%減を目指す。
■大容量水蓄熱槽を用いることで、熱エネルギーの保存を可能に。ピーク時の電力使用量の約50%カットを達成。約7,000トンの貯水量は、大規模災害発生時において生活用水、消防用水として提供される。
■「東京スカイツリー」のライティングは、オール「LED」化。1,995台の照明すべてにLEDが使われており、最大約43%の省エネ達成。
■館内の電力、熱量、CO2排出量は、「見える化」され、マネジメント。リアルタイムで計測され、集約されたデータは、視覚化された情報としてすべての使用者に共有化。
■タウン屋上には合計222枚の「太陽光パネル」が設置され、20kWの発電能力を持つ。さらに屋上や地上に配された大規模植栽は、CO2吸収や周囲の気温調節に一役買っている。
■タウン全体に降った雨水を貯める「貯水槽」も注目。貯まった雨水は「太陽光パネル」に散水し発電効率の低下を防ぐ。また、植栽への散水、トイレの洗浄水としても利用される。
全国に拡がる「分散型エネルギー」~国内事例
(北海道・東北)
(1)雪で電力を賄う「雪氷熱利用」ピラミッド型施設~北海道・札幌市
■札幌市モエレ沼公園内にあるガラスのピラミッド施設「HIDAMARI」は、積もった雪、約3,000m3を貯雪庫に貯蔵し、6~9月に館内冷房の冷熱源として利用。
■冷熱発生に電力を使用しないことで、年間約30tのCO2削減効果が見込まれる。
http://www.city.sapporo.jp/kankyo/energy/shokai/snowiceenergy.html
(2)「風力」「バイオマス」など活用。北緯40度のクリーンエネルギーの町~岩手県葛巻町
■風力発電や木質ペレットによるボイラー、蓄糞によるバイオマス発電など多様なエネルギーを用いた発電を行う
■酪農とワイン造りと合わせクリーンエネルギーも使用した観光事業を展開
http://www.town.kuzumaki.iwate.jp/index.php?topic=kankyo
(3)「水力」「地熱」「バイオマス」など豊かな自然を有効利用~.宮城県次世代エネルギーパーク
■水力や地熱、バイオマスなど様々な発電を古くから行っており、現在ではメガソーラーへの取り組みも進む
■水力発電出力1,000kW、地熱発電出力12.5MW、太陽光発電出力160kW。
■宮城大学太白キャンパスでも太陽光発電システムを行っている
http://www.enecho.meti.go.jp/saiene/park/p04.html
(4)木質資源の新たな利用「バイオマス発電」~福島県白河市
■伐採の採算が合わなくなり、質が低下する森林の熱(サーマル)としての新たな活用
■伐採を行えるようにすることで植林などを行い、元気な若い樹木を育てていく。
■樹木は二酸化炭素の吸収が盛んで地球温暖化の対策にも一役買う
■発電した電力は東北電力や特定規模電気事業者(PPS)へ売電を行う
■送電出力は約5,000kW、未利用の木材は年間6万トンにおよぶ
http://www.fesco.co.jp/swp/company/pdf/swp.pdf
(関東・甲信越)
(5)日本初の本格「洋上風力」~ 茨城県神栖市
■日本で初めて外洋に設置された洋上風力発電(ウインドパワー・いばらき運営)
■国内生産した国産風車による発電を行う
■1基の定格出力は2,000kW、7基の風車で7,000世帯の年間使用電力を賄う
■震災にも耐え、3日後には再稼働を達成
http://komatsuzaki.co.jp/windpower/hasaki.php
(6)公共施設の屋根貸し事業、「足利市民総発電構想」~栃木県足利市
■足利市が保有する公共施設の屋根を太陽光発電用の場所として有償で事業を募集。目的は再生可能エネルギーの普及と災害時の電力確保。
■災害や電力逼迫などの停電時に電力を供給するシステムを作る
■68の対象施設のうち59施設に市内企業から応募があり、地域経済の活性化はかる
http://www.city.ashikaga.tochigi.jp/page/souhatsuden.html
(7)都心で高効率の「ガスコージェネレーション」~東京都港区
■大規模ガスコージェネレーションによる発電と、廃熱利用の地域冷暖房施設を組み合わせ。省エネルギー、省コストに優れた高効率システムが整備された「六本木ヒルズの森タワー」
■地下階に電気供給施設と熱供給施設を併設し、各棟へ専用道内に布設した地域配管、配電線により電気および熱供給を行う
■最大電力出力38,660kW、最大冷房能力240GJ/hと大規模
http://www.mori.co.jp/projects/roppongi/technologies02.html
(8)全国初、市民出資の「太陽光発電」~長野県飯田市
■太陽光発電、省エネルギーの両事業に対し市民出資「南信州おひさまファンド」を立ち上げ、個人・法人計460名より満額の2億150万円が出資される
■環境省3ヵ年「メガワットソーラー事業」などにより太陽光発電所を07年度44ヶ所、08年度48ヶ所、09年度32ヶ所設置、全合計162ヶ所となる
■風力・小水力・バイオマスなど環境負荷の少ない新エネルギー等を市民有志や事業者らと研究。地域で廃食油を排出している事業者有志と廃食油を精製し、ディーゼル燃料に変えるBDF(バイオディーゼル・フューエル)実験プラントの設置を行う
http://www.ohisama-energy.co.jp/
(中部・関西)
(9)「太陽光」「風力」「燃料電池」、新エネルギー体験型施設~愛知県常滑市
■愛知県中部臨空周辺に様々な「燃料電池」バス、「風力」「太陽光発電」施設を備えた新エネルギー体験型施設「あいち臨空新エネルギーパーク」
■新エネルギーをわかりやすく学べる施設として小学校を中心とした社会科見学、大学、企業等の研修やセミナーに利用されている。
■発電だけではなく「天然ガスコージェネレーション」によって暖房も出来る
http://www.pref.aichi.jp/san-kagi/shinene/shinene_area/know/know06.html
(10)甲子園球場の名物「銀傘」に「太陽光発電」~兵庫県西宮市
■選手と観客に太陽の光~「阪神甲子園球場」は、大屋根に「太陽光発電」システムを設置。発電した電力をナイター照明に利用している。
■球場11個分の森林が吸収するCO2排出量を削減できる。
http://www.honda.co.jp/news/2011/c110118.html
(11)下水汚泥から生まれた「バイオガス」~兵庫県神戸市
■アーモンドの並木がつづく水辺の遊歩道がある東灘処理場。再生エネルギーへの取り組みは、日本初の快挙を実現。
■下水処理場の汚泥処理の過程で発生する消化ガスをバイオガスとして有効利用
■神戸市、独立行政法人、土木研究所により場内に限った利用ではなく「こうべバイオガス」として製品化された
■天然ガス自動車や大阪ガスへの供給が進み、年間のCO2削減量は約1,200トン
http://www.city.kobe.lg.jp/business/attract/database/company/401-500/455/455.html
(中国・四国)
(12)食とエネルギーの「地産地消」、スマートグリッドタウン構想~鳥取県鳥取市
■団地内の太陽光発電で発電した電力を、同じ敷地内の植物工場や介護施設など3つの施設で融通しあう実証実験がなされる。
■余剰電力は蓄電池に溜め、その電力を団地内の照明に利用する。
■3施設内と共同蓄電を結び電力のやり取りをすることが特例で認められた。これにより電力を融通しあうことができるので災害時などに役立つ。
http://www.city.tottori.lg.jp/www/contents/1309484793139/activesqr/common/other/4f9a3639002.pdf
(13)「地中熱」を冷暖房に使用した教育施設~広島県三次市
■地中熱ヒートポンプによる冷暖房、給湯システムの公共施設への導入が進められている
■2007年時点で通常のヒートポンプ、灯油利用の建物と比較すると40,9%の二酸化炭素が削減可能
http://www.pref.nagano.lg.jp/kankyo/ondanka/chikanetsu/misawa.pdf
(14)「風力」「太陽光」「地熱」「小水力」「バイオマス」、自然エネルギーで町づくり~高知県梼原町
■標高1300メートルの緑の草原に、高さ50mのデンマーク製風車2基、日本で最も高地にある風力発電所。風力発電による売電収入を環境基金として積み立て
■間伐で切った木は木質ペレットに加工、「バイオ燃料」に活用。心身のリフレッシュに役立つ「森林セラピー」コースも整備。
■3つの「小水力発電」は中学や街路灯の電気に。町立施設すべてに「太陽光発電」
■「地熱」を利用したプールもある
http://www.town.yusuhara.kochi.jp/
(九州)
(15)15基の「風車」、長崎県初の大規模「ウインドファーム」~長崎県鹿町
■長崎県初の風車を一定の地域に集中させるウインドファーム方式の風力発電施設「長崎鹿町ウインドファーム」
■発生電力量を増加させ、不安定な風による個々の風車のばらつきを防いでいる。
■発電量は一基当たり1,000kWで全15基。年間発生電力量は2,800万kWhになる。
http://www.jpower.co.jp/wind/win00700.html
(16) 砂防ダムの未利用水源を利用した「小水力発電所」~大分県日田町
■砂防ダム取水口から最大毎秒0.5t取水し、約550m先の貯水槽まで導水。18mの有効落差を利用して最大66kW発電
■発電した電力は鯛生金山の構内見学ルート、砂金採取場、レストラン、売店に供給されて、施設内の約6割の電力を賄っている。
■2006年の発電実績は381,103kWhで年間141トンのCO2削減に成功している。
http://j-water.jp/database/detail.php?no=38