2013/09/04 ニュース
JAMSTEC、海底の熱水を燃料電池型発電に応用
 山本正浩・海洋研究開発機構(JAMSTEC)海底資源研究プロジェクト研究員と中村龍平・理化学研究所・環境資源科学研究センターチームリーダーらの共同グループは、海底から噴出する熱水を燃料電池と併用して発電に利用する技術を確立した。沖縄トラフの伊平屋北フィールドで海底に熱水の噴出孔(写真)を削孔。同時に噴出する熱水と海水を燃料にできる燃料電池を熱水噴出孔に設置して、深海底での実発電に成功したもの。
 
 海底から噴き出す熱水には、硫化水素のように電子を放出しやすい物質が多く含まれる一方、海水には酸素のように電子を受け取りやすい物質が多く含まれる。共同グループは熱水と海水の電子の受け取りやすさの違いが存在することに注目。熱水噴出孔とその周辺海水にそれぞれ電極を設置し、燃料電池を構築した。この形式は熱水と海水を燃料とするため、電力が無尽蔵に供給される長所がある。
 また、温度差や蒸気を利用した発電形態に比べ構造が単純で、腐蝕に強く長期の使用が可能だという。試験装置は小規模なものだったが、この発電で消費電力が21mWのLEDライトが点灯できた。熱水噴出孔の化学エネルギーの潜在能力は2.6kWと試算されており、電極の大きさ・構造・素材などを工夫すればより大出力化することも可能と見られる。今後は、実際の耐久性を試験する必要があるが、熱水と海水の温度差や熱水噴出の流勢など利用した発電と今回の発電形式を組み合わせれば、熱水噴出口から最大限の電力を抽出でき、海底の電力供給システムを作れると期待されている。