4月より毎月末の木曜日に開催される「千代田区グリーン・ビル認証構想会議」の第2回が5月30日明治大学駿河台校舎アカデミーコモンにて開催された。第2回目の今回は「経済再生のキーワードしてのグリーンビルディング」というテーマでCSRデザイン&ランドスケープ株式会社代表取締役平松宏城氏が講演した。
平松宏城(ひらまつ ひろき)氏は、メリルリンチ証券マネージングディレクター(債券部門)などを経て2004年にCSRデザイン&ランドスケープ株式会社を設立。2013年3月に設立した一般社団法人グリーンビルディングジャパンの共同代表理事でもある。
CSRデザイン&ランドスケープ株式会社代表取締役 平松宏城氏
今回の講演では、●グリーンビルディング(環境不動産)に関する世界の動向、●投資家/金融との接点が生まれつつある理由、●グリーンビルディング(環境不動産)に関する日本の動向、●変化しつつあるテナントの意義、●今後予想される展開などについて1時間熱く語ってもらった。
特に米国の環境認証システムで、“建築物と敷地の環境性能評価システムの実質的グローバルスタンダード”となりつつある「LEED(Leadership in Energy&Environmental Design)」について専門的な知識をわかりやすく、詳細に説明していただいた。
講演の中から、いくつか注目すべき点について簡単に記しておく。
まず、LEEDの評価カテゴリーは
- サステナブル・サイトーヒートアイランド抑制、雨水流出抑制、生物多様性、脱自動車依存、オープンスペース
- 水の効率的利用―水道使用削減、敷地内処理など
- エネルギーと大気―省エネ機器、再生可能エネルギー、空調・照明・換気など
- マテリアルと資源―ゴミの分別回収、リサイクル材・地場産材優先利用、FSC認証木材など
- 室内環境―快適な室内環境(光、温熱、眺望)、外気量確保、低VOC材料など
- 革新的なデザイン
- 地域特性
の7カテゴリー。
また、今後予想される展開として脱クルマ社会、ヒートアイランド、都市型水害対策、生物多様性などの問題等を含め都市の在り方を基礎づけるサステナビリティ指針「LEED ND(Neighborhood Development)」に注目してほしい、と平松氏は述べていた。
この「LEED ND」は、「スマートな立地選択と土地利用」「エリア開発形態とコミュニテイデザイン」、そして会議のテーマでもある「グリーンインフラ、グリーンビルディング」という3つの評価軸でエリアの環境配慮を評価する、地域開発の認証システムであり、いま世界各地で「LEED ND」の申請が増えているとのこと。特に本家である米国以外のエリア、中国とアジア、中南米の新興国からの申請が目立っていること。背景にあるのが急速な都市化と人口増であること。
また、「LEED ND」の根幹ともいえる概念が、外に出たくなる、歩いて楽しい空間づくりを意味する『ウォーカビリティー(Walkability)』であり、エリアのサイズは、ビル2棟から320エーカー(約129ha)までを一応の目安としていることなどを紹介していただいた。ただ「LEED ND」に関して、残念ながら日本ではまだ登録申請の事例がないということ。しかし、「LEED ND」の『ウォーカビリティー』という概念は“コンパクトシティ”とも相性がよく、地域農業、街づくりへの住民の参加、地域密着型の学校など、今後の日本の新しい街づくりに役立つ指針になるだろうと述べていた。
(取材) 若生幸成