日本国政府は7月3日、第5次エネルギー基本計画を閣議決定した。今回の基本計画では東京電力福島第一原子力発電所事故の経験、反省などを原点に策定された。今回は主に2030年、2050年を見据えたエネルギー政策の基本的な方針を明示している。まず、2030年までの方針は、温室効果ガスの削減率26%が道半ばで、計画的な推進と実現重視の施策が重要だと指摘。実現のための施策として、▽全エネルギーに占める再生可能エネルギーの比率を、震災前の10%から30年には22~24%に拡大、▽低コスト化や電力会社の系統制約などを克服し、主力電源化を進める、▽水素/蓄電/分散型エネルギーの導入推進、▽火力の比率は震災前65%から30年には56%に低減、▽実質エネルギー効率を35%減らし、省エネを推進--などとなっている。
一方、2050年を見据えた対応としては、あらゆる選択肢の可能性を追求していくと明言。温室効果ガスの80%削減を目指し、▽経済的に自立し脱炭素化した再生可能エネルギーの主力電源化を目指す、▽水素、蓄電システムとそれに関連したデジタル技術の開発に着手、▽水素エネルギー・蓄電システム活用などでの脱炭素化への挑戦、▽次世代の再エネと蓄電システム、電気自動車などを複合的に取り入れた分散型エネルギーシステムの構築、地域開発、▽火力発電でも脱炭素化に向けた水素利用の開発に着手--などを目指す。これらの施策はプロジェクトの立ち上げ、国際連携などを網羅し「総力戦」で行うとしている。政府が環境負荷削減と新エネルギー開発で主導的な立場を目指す背景には、①脱炭素化の技術間競争の始まり、②技術の変化が増幅する地政学リスク、③国家間・企業間の競争の本格化--があるとしている。