2012/10/22 ニュース
“Energiewende”エネルギーヴェンデを進めるドイツ~「自然エネルギー財団」現地調査から~

自然エネルギーの普及を政策やビジネスモデルの提言

幅広いネットワークづくりを通して推進している

「自然エネルギー財団」(孫正義会長、トーマス・ユーベリエル代表理事)は

9月23日~28日まで、ドイツの電力市場・電力システム改革に関する

現地調査を実施し、その調査報告書にまとめ、発表した。

 

日本と同じく、長い間、垂直統合型・地域独占の電力システムに支えられてきたドイツは、

1990年代の終わりから小売りの全面自由化を実施、2005年からは本格的な発送配電の分離に取り組んでいる。

ドイツでは、2050年に80%を自然エネルギー電力から供給することを目標として掲げ、

すでに今年前半で25%の供給を実現、将来をバックキャスティングする形で、

自然エネルギーの最大化・最適化に向け、送電網の構築、市場デザイン、法整備などを、実施している最中である。

日本に大きく先んじるドイツの現在をまとめた現地報告書からポイントを列挙してみた。

 

ドイツは、2050年自然エネルギー財団比率80%に向けて、次のステージに移行中

ドイツは、2011年総発電量に占める自然エネルギー比率が19.9%に拡大し、原子力比率(17.7%)を上回った。

さらに、2012年上半期には25.1%まで伸びている。

太陽光は目標を大きく上回る導入が進み(2011年750万kW、2012年も800万kWの導入見込み)、

また、政策目標の一つである導入費用逓減も進んでいることから買取価格も順々見直しがされている。

自然エネルギーの順調な拡大によって、脱原子力という従来の基本路線が強化されている。

さらなる自然エネルギー拡大のため「送電線の拡充」及び「自然エネルギーの市場統合」

という次のステージの議論が行われている。

 

電分離により公平な競争環境が実現し、新規参入も促進。

送電部分への規制強化が自然エネルギーの導入にも奏功。

1998年より電力自由化と発送電分離が進められたドイツ電力市場は、

まず100%の電力小売り自由化が導入され、発送電の分離については、会計分離から始められた。

当初は送電線の利用料金(託送料金)の設定が、電力会社と新規参入者の交渉に委ねられた。

その結果、託送料金が高止まりするなど不十分な改革となり、

公平な競争環境が生まれず、新規参入者のほとんどが撤退した。

2005年に、送電部門に強い監督権限を持つ連邦ネットワーク規制庁が創設され、

託送料金を事前認可制に改めた。ネットワーク規制庁は送電部門を強く規制し、

発電部門と送電部門の会計、情報、運用の徹底した透明化と分離が促進されたため、

経営形態についても発送電の分離が本格的に進んでいった。

現在では、所有権分離も含めて送電部門の完全な独立性が担保され、

新規参入者にとって公平な競争環境が実現している。

また、発送電分離後の送電部門への規制強化が、

自然エネルギー導入のための送電網の拡充を行う上でも奏功している。

 

電力会社は自らが送電部門を売却するなど、所有分離を進める仕組みを整備

ドイツでは法律上、所有権分離だけでなくITO(法的分離)、ISO(機能分離)のいずれの形態も認めているが、

送電部門はネットワーク規制庁による厳しい規制下にある。

託送料金も同様に規制を受けるが、その分、長期安定的な事業という側面があるため、

ファンドなどからの資金調達がし易くなっている。

発送電分離によって、発電事業のビジネスモデル(不安定/短期回収型)と

送電事業のビジネスモデル(安定/長期回収型)が明確になり

参入するプレイヤーによって棲み分けが進んでいる。

大手電力会社は、異なるビジネスモデルの事業を抱えながら、

今後も続く送電部分への規制強化のトレンドの中、送電部門を所有する必然性が低くなり、

現在では4大電力会社のうち2社が送電部門を完全に売却し、

もう1社も現在25%の株式を保有しているが将来的に完全に売却する方針となっている。

 

「送電網強化」が喫緊の重要課題

自然エネルギーの更なる拡大のためには送電網の強化が喫緊の課題との認識の下、

送電網の整備を迅速化するための法律が新たに制定され、

送電線整備に要する時 間の短縮化措置など最大限の導入策を図っている。

 

報告書全文(PDF)はこちら

 http://jref.or.jp/images/pdf/20121018/energiewende_20121018.pdf