矢野経済研究所は7月4日、国内の中小水力発電市場の調査結果概要を公表した。同調査は、6月28日に完工した調査レポート「中小水力発電市場の現状と将来展望 2017」(A4判162ページ、税抜頒布価格15万円)の概要版で、同社の予測では2030年度の中小水力発電の発電量は593億kWhに上ると予測されている。
今回の調査は今年4月~6月、中小水力発電事業者、発電設備機器メーカーなどに面談、電話調査するなどして取りまとめた。ここでの中小水力発電とは、おおむね発電出力100kW未満~3万未満の水力発電をさす。昨年度の発電量は490億kWh(前年度比4%増)と増加し、2020年度には511億kWh、2030年度に593億kWhまで拡大すると見られている。このうち、FIT適用分の発電量は20億kWh(33.3%増)に、FIT買い取り金額は523億円(33.8%増)とこちらも増加した。これが2020年度には、FIT発電量と買い取り金額が40億kWh・1000億円に、2030年度は119億kWh・2300億円に拡大すると予測されている。発電設備の建設動向では、昨年度に8.5万kW・1245億円分が竣工している。設備市場は今後もプラス基調が続き、2020年度には10.5万kW・1680億円、2030年度には20万kW・2700億円に拡大すると見込まれる。
一方で、中小水力発電市場はプラス要因ばかりではない。まず、水力発電設備のキーハードである水車を製造できるメーカーが限られており、機器メーカーはフル稼働の状態が続いている。国内では新規水力発電事業の停滞傾向が続いたため、技術者数や生産設備で機器メーカーの余力がほとんどなく、設備供給が制約されている。また、従来からの電力会社では系統接続に制限があり、再生可能エネルギー発電設備を接続できない場合や、接続に莫大な費用がかかる場合が増えてきている。これは太陽光発電事業ブームの影響もあると見られ、2020年の発送電分離などで系統接続の問題が解決されていくことが期待されている。