環境経済理論の形成と発展、環境政策論が研究テーマの明治大学政経学部・大森正之教授のゼミナールでは、毎年「環境経済学」に関することを数多く学んでいる。3年生は、テーマ別にチームに分かれ共同研究を行い、論文としてまとめている。昨年2012年は、エネルギー関連について3つの論文が発表された。エコタイムズでは、大森教授の承諾のもと、学生たちがまとめた3つの論文を随時紹介していく。第1回は、昨年11月29日に脱稿された「都心5区の中小企業向け省エネ支援政策の改善に向けて」という論文を紹介する。
「都心5区の中小企業向け省エネ支援政策の改善に向けて」という論文は、大森環境経済学ゼミ在籍の一門由希子氏、江島咲希氏、広田美紀氏、吉田哲大氏の4名による共同論文である。序文で彼女・彼らは、次のように論じている。
以下、論文の「はじめに」をそのまま転記
近年、地球温暖化対策、化石燃料の枯渇への危惧から、社会の省エネルギー化(以下、省エネ)が求められている。また、2011年の東京電力の福島第一原子力発電所の事故を契機として、化石燃料の調達費用の高騰、2012年の再生可能エネルギーの固定価格買取制度における賦課金、環境税の導入により、電気料金が値上がりしている。よって、日本社会全体において、省エネの必要性が高まった。今後、省エネ対策として省エネ機器の需要が高まると予想される。
2012年時点で、国や自治体による省エネ支援政策が行われているが、私たちは自治体の省エネ支援政策には改善の必要性があると考察する。自治体の省エネ支援政策には、補助金制度の制度設計や広報活動の内容や媒体に改善の余地がある。そこで、私たちは中小企業の省エネ機器導入を促進するために、自治体に対し、以下の3点を提案する。
①省エネ支援政策における広報活動の改善
②自治体と省エネ機器メーカーの連携による事業所・家庭向け省エネモニタリング制度
③実施期間を限定した補助金制度への転換
まず第1章では、研究テーマの設定理由および研究対象である都心5区、中小企業、LED照明・日射調整フィルム・エネルギー計測システムの選定理由を述べる。次に第2章では、中小企業における省エネへの取り組みの実態を基に、省エネ機器普及の必要性を論じる。続く第3章では、国、都、区における省エネ支援政策の特徴、および都心5区の省エネ支援政策の異同を述べ、類型区分をする。第4章では、都心5区における省エネ支援政策に関して、3点の問題点を指摘する。最後に第5章では、中小企業において省エネ機器の導入を促進させるために、都心5区の補助金制度と広報活動に関する省エネ支援政策の改善を提案する。
論文は、以下のPDFにて全文を読むことができる。
http://www.kisc.meiji.ac.jp/~omorizem/files/13_toshin.pdf
(文責)若生幸成