2017/03/10 ニュース
水素利用や流通拡大にPower-to-gas技術などが有望 経産省
 経済産業省は3月7日、「CO2フリー水素ワーキンググループ報告書」を取りまとめ公表した。報告書は、同省の水素・燃料電池戦略協議会の下部組織、CO2フリー水素ワーキンググループが取りまとめたもの。CO2フリー水素とは、製造時や流通時にCO2が発生しないか発生量が少ない水素のことで、同グループは将来的な利活用の拡大策などを昨年5月から議論していた。報告書には現在の技術動向、今後の方向性と現状での課題などが盛り込まれている。主な内容は、▽再生可能エネルギー普及拡大への対応としてのPower-to-gas(電力を水素に変換するシステム)技術の活用、▽水素サプライチェーンの低炭素化、▽CO2フリー水素の利用拡大に向けた取り組みの方向性--などとなっている。
 
 報告書では、Power-to-gas技術をエネルギーの貯蔵技術として、「再生可能エネルギーを電気だけでなく水素として利用することで、ローカルな系統制約の課題を克服できる可能性がある」と評価。その反面、新技術であるため「製造コストは、化石燃料の改質に比べて高くなる傾向にある」と、現状では経済性が課題だとしている。水素サプライチェーンの低炭素化では、流通手段として陸路・海路での輸送、水素パイプライン、圧縮水素化などの方法がある。この点では「製造した水素を近傍で利用するケースでは、パイプラインでの輸送が有力な手段となる可能性がある」と指摘した。一方でガス事業法などに抵触しないよう、「保安の確保を前提に規格や敷設方法、運用などを検討していくことが必要ではないか」としている。CO2フリー水素の利活用拡大では、まず何がCO2フリー水素かとする定義づけが問題だとした。制度面では、「J-クレジット制度などを活用した水素の製造で、CO2フリー水素の量的課題の解決に取り組む」とした。さらに「CO2フリー水素活用にインセンティブを与える制度設計(省エネ法や高度化法への組み込み)」が必要とした。利活用に何らかのインセンティブが制度化されれば、供給側・利用側双方がそのメリットを享受しうる。このため、同グループは今後とも「(CO2フリー水素の)取り引きが促進される仕組み作りを検討していくことが必要」と報告を結んでいる。