矢野経済研究所は10月17日、リチウムイオン電池(LiB)の主要4部材で市場規模などを予測した調査結果概要を発表した。同社が今年3月~9月にかけて、日本などの部材メーカーを調査した結果をまとめたもの。調査の詳細は同社から「2017年版 リチウムイオン電池部材市場の現状と将来展望~主要四部材編~」(A4判475頁、頒布価格26万円)で販売されている。この調査では正極・負極材、電解液・電解質、セパレーターを対象とした。調査結果によると、まずLiB主要4部材の世界市場規模(メーカー出荷金額ベース)は、2016年は98億7744万9000ドル(前年比40.1%増)と推計されている。車載用LiBセルなど中・大型LiBセル向けの出荷数が、民生小型機器用LiBセル向けを上回って市場成長の牽引役がシフトした形となった。今年以降も、車載用LiBセル向けに需要が拡大する見通しという。また、民生小型機器用LiBセル向けは穏やかな成長が続くと見られ、今年の市場規模は127億9956万3000ドル(29.6%増)と見込まれている。2020年には、市場規模は220億8815万7000ドルに拡大すると予測される。
市場動向では、引き続き中国メーカーが存在感を高めており、今年以降も中国の内需拡大に伴い中国メーカーが出荷を伸ばすと考えられている。日本や韓国のメーカーは、自国のLiBセルメーカー向けが主力のため、今後は両国のセルメーカーが主要顧客としている日・欧米のカーメーカー用が出荷増となる可能性が考えられる。これは欧州の電気自動車市場が成長する点などに期待している動きと見られる。ただし、現在各メーカーの生産能力は増強されているものの負極材、セパレーターは今年~2018年にかけて生産拠点の稼働率が下がると予測される。2016年の4部材を製造する生産拠点の稼働率は平均すると55.9%だった。正極材は70%台の稼働率だが、負極材、電解液は 50%弱、セパレーターは50%強の稼働率となった。正極材に比べると。他の部材では生産能力と実需にギャップが見られる状況となっている。一方、昨年は金額ベースの伸び率が数量ベースでの伸び率を上回り、2015年後半から炭酸リチウムの価格が高騰した。今年は年初からコバルトの価格が上昇し、正極材では中国を中心に三元系正極材の価格に上昇の動きが見られた。これらの点から、2018年以降は車載用のLiBセル向けに需要が増加、需給バランスにタイト感が出る可能性があると考えられている。