矢野経済研究所は5月10日、太陽光発電設備の国内セカンダリー市場の動向を調査した調査結果概要を公表した。発表したのは、同社が3月30日に発行した調査報告書「2018年版 太陽光発電設備運用・セカンダリー市場の現状と将来展望」(A4判・350頁、頒布価格15万円)から要点を抜粋したもの。概要によると、太陽光発電設備のセカンダリー市場は今年度に450MW、2020年度には800MW規模に達すると予測されている。
セカンダリー市場とは、既に稼動している太陽光発電設備を売買する市場を指す。FIT制度の相次ぐ電力買い取り価格引き下げなどで、太陽光発電設備の新設はメリットが薄れ始めている。その一方で、竣工した設備は相次ぎ稼動している。このことから、設備数そのものは増加してきているため、セカンダリー市場が徐々に形成されつつある。同社の見込みでは、既に売買されたか売買される予定の設備は、2016年度が200MW、2017年度が300MWに達する見込みという。売買する主な事業者は、発電事業者のほか金融機関、機関投資家などが挙げられる。同社は今後、新電力事業者や投資家を中心に既存設備を購入する動きが継続すると見ている。既存設備の中でも、FIT制度施行後の早い段階で設備認定を受けた設備は売電価格が高く、引き合いが集まると予想される。維持管理コストが低い太陽光発電所は、新電力事業者が購入に関心を示すと考えられる。市場に影響力を持ちうるプレイヤーとしては、インフラファンドが挙げられる。インフラファンドは、設備に投資し、そのリターンを投資家に分配する。設備新設が踊り場にさしかかろうとする中、インフラファンドが既存設備に投資するケースが増えると見られる。
市場の拡大と同時に、既存設備の売買を支援するサービスも商品化されており、買主と売主の仲介サービスが既に見られている。また、設備の技術的な側面や資産価値を評価するサービスなどもあり、設備の施工会社や維持管理会社、金融機関などが参入している。買主は発電設備の発電能力や状態などが一定の水準にあり、かつ適正な価格で購入できる設備を求めている。一方、売主はできる限り良い価格条件での販売を目指す。この傾向から、設備の維持・向上に寄与する点検やメンテナンスの重要性が増している。設備の価値は発電パフォーマンスが指標の一つとなるため、発電設備の発電能力を最大限発揮し、かつ良好な状態を保つことが重要だからである。今後は、取り引きの仲介やデューデリジェンス、資産価値評価など売買支援サービスのニーズが増加すると見られる。これら以外にも、設備の資産価値を高める改修サービスにも関心が高まる可能性がある。